ある日、突然現れた「半透明の小さな女の子:悠」。
 この時からレイゼの日常は変わった。

陽実と冷是
 幼い頃にレイゼと引き離されたレイゼの妹「陽実」…彼女は「ヒト」とは違った…故に迫害された。彼女にとって兄だけが信頼出来る人物であった。
 兄を想う心…「保護」の名目のもと兄と別れる事になる事を知ったその時、悠は生まれた…自分を嫌う心がもう1人の自分を生み出した。1人の女の子として見てほしい…その為には兄に近い年齢でないといけない。
 この時、レイゼ15歳、陽実10歳である。とはいえ…陽実の外見は人間の5歳並であったのだが…
 陽実の夢の中では陽実は14歳の女の子だった。兄より1つ年下というところに「妹」としての自分が抜けていないところが見受けられる。
 陽実の夢では兄は常に15歳であり、自分は14歳である。そして…陽実は夢の世界へ召喚され…悠は陽実という肉体の枷から解放される。
 自分を嫌う心から生み出された悠には陽実の記憶はない。「兄」を慕う心だけが残されていた。
 そして陽実の兄「祐里」の元へ自然と運ばれる。

悠と祐里(新生雑記時代)
 祐里は「保護先」での陽実の義兄である。祐里は「悠」の正体にすぐに気づくものの「妹」を大事にしていた祐里はもう1人の妹である悠を傷つけない為に記憶を持たない悠に「自分の分身」であると説明し「悠」の名前を与える。
 悠の「兄を慕う心」は祐里へと向き、自然と祐里に好意を抱くようになる。祐里はその想いに気づかずに「困った妹」だな、と接してきた。
 が、祐里は不覚にも「悠」を愛してしまう。だが悠を愛してはいけない…わかっていた。それでも彼の心は止まらなかった。
 お互いに「愛の告白」をしたわけではない。だが、2人はわかっていた。お互いの気持ちが…そして時は過ぎ…別れの時が訪れる。
 陽実が夢の世界から解放され…悠は再び陽実の内なる心へと封印される事になる。
 2人に涙はなかった。いつか…また逢える日が来る事を信じていたから。
「絶対に忘れないでね…ボクがいたって事……消えたく…ない……な…」

悠と冷是
 心は陽実に封印されたはずだった。だが、目覚めたら知らない場所だった。そして目の前に不思議そうに自分を見つめる巨人がいる。
 違う!自分が小さいんだ…そして…半透明である。しかも浮いている…
「ええぇぇ、ボクって妖精だったのぉ!」

 この娘、消える瞬間まで…いや、今この時になっても自分の正体に気づいていなかったようである。
 何故、封印されたはずの悠の心が残っていたのか?それは「兄への想い」そして冷是の「妹への想い」が結びついての奇跡としか言えない。
 冷是は夢の世界で陽実と再会していた。そして悠の存在を聞いていた。
 そして目の前にいるのが悠である事に気づいた。冷是の思いは悠に出会った当初の祐里と同じである。悠を幸せにしてやりたい。
 悠に悠の本当の姿を語る冷是。そしてそれに驚く悠…自分が「祐里」の妹の分身であった事に。
 だが、この時教えられたのは全てではなかった。「悠はもう1人の陽実」与えられた情報はそれだけである。兄を慕う心から生み出された事…何故14歳であるのか…そして目の前にいる真実を告げた男こそ本当の兄である事は告げられなかった。
 悠が祐里を愛している事に気くが、今の悠は「冷是の妹への想い」から奇跡的に残った悠の心の欠片。詳細はわからずとも「悠」が自分に特化した存在である事には気づいた。祐里の元へ送り届けるには自分から切り離さないといけない。その方法は思いつかなかったが…悠にもその事を伝え…分離させる方法を考え始める。
 方法を考えている内に自分が悠に惹かれていっている事に気づく…そして悠も自分の存在に思い悩み始める。
 冷是は告げた…自分が悠の兄である事を。薄々感じていたのか悠も素直に受け入れた。そして2人は兄妹となる。
「じゃあ、よろしくね、おにーちゃん」

 だが、妹となっても冷是の悠への想いは止まらなかった。妹であろうと可愛いものは可愛い!うむ、わかるぞ!!このままではいけない!その思いから一時的処理として悠を連れて祐里の元へ訪れ…悠と祐里を再会させる。この時、何があったかは冷是は知らない。だが、悠は傷つき自分の存在を嫌悪した。
「もう、いいよ…ボクは存在なんかしてたくない!消してよ!もう苦しみたくないよ!!」

「そうだよ!全部、キミが悪いんだよ!!だからボクを消してよ!!」

 …自分では祐里の代わりにはなれないのか?冷是の想いは伝わり…悠は冷静さを取り戻す。そして自分が祐里以上に冷是に…兄に惹かれている事を初めて自覚する。
「でも、絶対にボクを幸せにしてよね!ボクを泣かせたら承知しないぞ!」

 冷是の悠への…妹への想いは募る一方…悠の冷是への…兄への想いも日に日に増していく。
 そして転機が訪れる。陽実に封印されている悠の心の一部を貰い受け…今の悠と合わせ心の移植を行い…切り離す。わけわからんとか言われてもこれ以上の説明は出来ん!いわゆる精神体のままで肉体を得たわけではないが…独立した存在となった悠は…ご褒美と称して兄にキスを…
 混乱した冷是ではあったが…悠に自分の想いを告げる。しかし、その返答は。
「そうか、そうか…当然だよね!でも、思わず勢いでやっちゃっただけだから…両思いだ!とかって調子に乗っちゃダメだぞ」
 素直じゃない娘である…兄から告げられた言葉は何よりも嬉しかったはずなのに…
 自分の想いを隠しつつ…兄と楽しく過ごす悠。そして何となく想いは伝わり「兄妹兼恋人」という関係になる2人。
 しかーし、そんな2人を神は許さなかったのか…悠は突然の消滅を遂げる。妹の消滅に涙するレイゼ…発狂しそうなその時…彼は禁断の秘法に…ありがち?
 魔王との契約により魔法を身に付けたレイゼは悠消滅の原因が長い間「肉体を失った状態」であった悠の精神が、この世界で「形」どる力を失い霧散している事を知る。
 魔法で精神を拾い集め…そして自らの肉体を悠の肉体へと変貌させ…悠に肉体を与える。
 そして目覚める悠。だが彼女が慕う兄はどこにもいなかった。孤独にさいまれながらも兄が帰ってくるのを信じる悠。
 一方、レイゼは悠の二の舞にならぬ様に魔法で精神を固定化し…一時的に物質化する力を得る。が…物質化は精神の消耗が激しく…精神固定化の魔力が失われる恐れがあり多用は不可能であった。
 そして帰還するレイゼ…こうして悠とレイゼの新しい生活が再び始まった。
 なお、レイゼの精神体が人間大であるのに対し悠の精神体が16cmと非常に小さかったのは「悠が魂の欠片」であるからに他ならない。肉体を得た現在でも悠は「実は」不安定な存在である事に変わりはない。

補足:悠が14歳で固定されてる理由
 兄に近い年齢で過ごしたいという想いから生まれたわけで…悠が成長を始めるには「兄に近い年齢」で兄と過ごさないといけないんです。
 ところが肝心の兄は既に26歳!どうやっても悠の願いは叶わないわけで見事な「自己矛盾」を起こしてるわけです。悠本人がこれに気づくと「自分の存在の無意味」さから消滅してしまうのではないかと「祐里」と「陽実」が危惧し…冷是にも「話すな!」と言っておいたんですが、レイゼにーちゃんは悠はそんな事で消える程、弱くない!と言って教えてしまいましたとさ。
 つうわけでレイゼが若返らない限り悠は永遠に14歳です、見た目と精神は。でも、レイゼも26歳で止める宣言をしてるので今後2人の年齢が開く事はありません。
 12歳程度の年齢差ならまあ、問題ないでしょう!