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 昭和50年8月。
 母親が臨月を迎えた9歳の少年「ボク」は、夏休みが終わるまでの1ヶ月間、黒潮が洗う伊豆半島の田舎町、富海に住むおじの家に預けられることになりました。

 ボクが居候するのは、おじ夫婦が経営する民宿「茜屋」。
 あかね……。それは夕間暮れの空の色。
 潮館の港で父親と別れ、独りぼっちで連絡船に乗ってきたボクがたどり着いた富海の町は、美しい夕焼けに包まれた幸せな、そして、ちっぽけな町でした。

 夏休みだというのに、さっぱり客がやって来ない民宿を切り盛りするおじちゃん、おばちゃんと、その子供のタケシとシゲル。
 台風が来たら壊れてしまいそうな海の上の食堂で毎朝、毎晩食事する。
 元気印がでっかく付いたやんちゃな家族との生活は、都会っ子のボクの心と体にきっと暖かい何かを残すでしょう(たぶん)。

 富海の人々との触れ合いや、さびれた民宿にやってくる謎のお客が巻き起こすチン騒動……。
 それは愛すべき風景が織り成す幸せな物語。
 潮の香りが漂う富海の町で、ボクはどんな思い出を作るのでしょうか……。