次にジョジョ小説です。ストーリー概略とか書いちゃうのでそれは注意。
 読み終えた感想としては「スタンドを使った、ジョジョとは別な作品」。
 小説「G−SAVIOUR」の著者が「これはMSを使った、ガンダムとは別な作品」だとガンダムという重責に耐えられなかったからなのか、こんなのガンダムじゃねーって言われるのを未然に防ぐためか、そんな事を言ってましたが、このジョジョ小説がまさにそれ。…これはジョジョではないッ
 設定は…フーゴがブチャラティ一行から離脱してアバッキオが死亡するまでの間のどこかです。
 当時、誰もが…「フーゴはこの先、敵になるな」と思っていたかと思いますが、そこは荒木先生。さすがです、見事に裏切ってくれて最後まで出番無し。すがすがしかったですね、捨てたキャラはもう出さん!っていう。私は最後までフーゴが登場しなかったのは素晴らしい判断だと今でも思ってます。
 そのせっかくの素晴らしい演出を台無しにしてしまったのがこの小説。荒木先生がどこまで関わってるのか、全く無関係なのか…それは知らないですけど、荒木飛呂彦という天才の演出を凡人がぶち壊してしまったっていうそんな感じかな?
 もうおわかりでしょうが、フーゴが敵として登場します。パープルヘイズのウィルスで無差別大量殺人を行い…
 トリックは…
「ジョルノとアバッキオは既にパープルヘイズのウィルスに対して抗体を持っているから、ブチャラティ達が負ける事はない」
 という、組織の命令には逆らえないけど、元仲間であるブチャラティ達を更に裏切るような真似はしたくない、だそーです。なめてますね、フーゴ。というか、この著者は。
 私はブチャラティ一行は「覚悟」が出来てる人達だと思ってます。フーゴにしたって自分の確固たる意思でブチャラティに従うのをやめた。私はフーゴは組織の命令なら本気でブチャラティ達を殺しにかかる人物として見てました。
 ところが、この小説でのフーゴは…覚悟が出来てない。組織も捨てられないしブチャラティも捨てられない…そんな優柔不断で信用ならない人材はボス…ディアボロどころかポルポでさえ採用しませんて。「ブチャラティを裏切ったという事=いつか追撃命令が自分に来る」それを覚悟しての事のはずなんですけどねぇ。
 ジョルノ達はパープルヘイズのウィルスが無効だから、作戦に参加する。ブチャラティ達が死ななければ一般人がどれだけ死のうと知った事じゃない、作戦そのものは気に入らないけど悪いのはそんな腐れた命令を出した組織。ボクには責任はない…でも、気に入らないから命令した奴は殺す!…おいおい、サイテーだな、フーゴさんよぉ。
 ブチャラティが許すと思うか?そーいう利己的な殺人を平気で行えるボスだったからこそ裏切ったのに…そのボスよりもサイテーな大量殺人の責任放棄までしたお前を許すと思うか?
「ありがとう、パンナコッタ=フーゴ」
 じゃねーだろ?お前らは一体何のために戦ってる!
 この著者…普段どーいう本を読んできたんでしょうか?結果だけ見ても、そして行動を見ても「組織も裏切ったし、ブチャラティも裏切ってます」。でも、この著者は「どっちも裏切ってない素晴らしいアイデア」と思い違いしてるようですし、そんな「フーゴ」を素晴らしい奴だとでも思ってるみたいです、読んだ限り。
 自己満足というか…著者のおごりがにじみ出てるというか、自分の作品に陶酔してるというか…そうでないとああいう台詞は出てこないでしょうし。ジョジョ云々でなく、小説として…既に駄作なんですけど、これ。
 まず、現実の厳しさを知らない…ポルナレフがヴァニラとの闘いで突然、新しい能力に目覚めないのと同様に…都合よく奇跡は起きません!!…確率と統計…もうちょっと常識を身につけて欲しいですね。
 敵に「右手」で触れたモノと「左手」で触れたモノの位置を交換する能力を持った人がいます。この人は、とんでもない大馬鹿野郎です。
 アバッキオがムーディーブルースの能力を使う事を前提に…もし、使わなかったらそれでおしまい。
 そして使った場合は誘導されて自分の仕掛けた罠のある場所に移動すると予想。
 その場所は「水場」なんですが、あらかじめ機雷を沈めておいて、それを発砲スチロールと位置交換します。そして、ブチャラティ達が機雷地帯にたどり着く時間を予想して、また機雷と位置交換します。機雷自体は実は別に期待外で機雷を置く位置で誘導して特定の場所に誘い出すのが真の目的です。
 問題は、ここですね、彼は数多くの過ちを犯してます!まず、何故に最初に機雷と発砲スチロールの位置交換をする必要があったのか…最初の最初から発砲スチロールを機雷と交換したい場所にばら撒けばいいんです。何で機雷と交換して、更にまた交換するんですか?
 次に発砲スチロールは…流れるだろ…特定の場所に機雷を置いたつもりでも、発砲スチロールは水の流れでゆらゆらと…これでは誘導かける事なんて出来ません。
 第3に時間を予想するなんて無理だって事。ブチャラティ達の行動を完全予測する事は出来ません、ムーディブルースの再生時間をほんの10分でも変えたら…小説では3時間としてましたけど、それを3時間10分にしてたら?…動き出すのはそれだけで10分遅れます。10分も早く機雷と発砲スチロールを交換したら…発砲スチロールと交換した意味無いです。そもそもが機雷置いた事自体意味ないかと思いますが…それはとりあえず置いておいて。こんな不安定で曖昧な予測で事を起こす犯罪者はいません…そういう事をされたら金田一少年もコナン君も推理成り立たなくなります。「揺れの範囲の大きい予測は無意味」この程度もわからない馬鹿なんですね、今回の敵。まあ、ブチャラティ達は見事にジャストタイミングで何もないと思っていたところで機雷に突如変化するとい事態に見舞われましたが…その意味ではもしかしたら敵はすごいバカなのかもしれません。予知能力あるとか…キングクリムゾンより遥かに未来が見えるんですね…。馬鹿の証明としては「完璧な作戦」とか言っていた事でしょう。全然完璧じゃねーよ、最初の最初から問題ありすぎだよ!
 第4に…そもそもが機雷地帯に誘導しておいて、何で更に機雷で誘導する必要があったのか!そもそもが、どうやって誘導したかというと…自分の正体を隠して…誘拐された老人を装って…ムーディーブルースでその老人を再生した一行はムーディーブルースを追って…そして機雷地帯に……そのまま、最後まで誘拐された老人装って最終誘導地帯まで導けばいいのに…全然「怪しい」とかも思わず、見事に騙されてましたから…ジョルノらしくもないですけど。

 さて、誘導した地では何を仕掛けていたかというと…まずパープルヘイズのウィルスで無差別攻撃を行います。その街には癒しの力を持つスタンドを持った少女がいまして、彼女が必死になって被害者を癒します。しかし、被害者の数は甚大!…スタンドという物理法則を無視した存在ですが、著者の頭の中では何がどうなっているのか知りませんが…癒した場合、その癒した傷や痛みはどこにいくのか?「スタンド」の体内に吸収されていくんだそうです……ほ、本体大丈夫か?
 まあ、そういうスタンドなわけであまりにも多くの癒しを行った為、許容範囲を越えてしまい…巨大化!本体のコントロールを離れ暴走…体内で増幅されたパープルヘイズウィルスをばらまいて…という。
 これが今回の敵の狙いでした。狙いとおり上手くいったのですが、読んだ途端…この作者…頭悪いわ…と実感しました。
 まず…何故に癒しの能力を持ったスタンド使いがいる事を知ったのか?…なんと、街にいるスタンド使い全てを把握してるそうです!いくら組織でも…無理だろ?スタンド探知機とかでもない限り。特にこの少女は自分の能力を隠してましたから…どこでどう知るんですか、それを?つまり「組織の力で街のスタンド使いを全員把握」してるっていう設定にしちゃえばいいや、組織の力は強大だもんな、という安易極まりない、考え無しな。…杜王町じゃねーんだから「把握する」と表現するほどスタンド使いはいねーだろ!っていうツッコミもできます…(それでいて組織のスタンド使いは極めて少ないだとか書いてますし。スタンド使いは幹部ばかりだとか…ナランチャとか幹部なんですか?下っ端にもいっぱいスタンド使いいそうですけど、あの組織は)とにかくスタンド使いを把握できるんであれば、ポルポの入団試験なんて意味ないわけで…作者馬鹿です。
 次にスタンド能力について。別に癒しの力があって、癒すとスタンドの体内に毒素として残るっていうのはいいですが、その場合…本体の体内にも同じ事が起きるわけですよ?何で本体無事なんですか?作者バカです。
 そして、本体さえ知らなかった…限界を超えると巨大化して暴走する、しかも体内の毒素を「増幅」までしてしまうという。どこでその情報を入手した!?…利用できるわけないじゃないですか、そんな…暴走してウィルスをばらまくだとかわかんないんだから。
 ここまで何とか組織の力で把握できていたとしましょう。何故にたかが数人殺すのにウィルスを広範囲にばらまく必要あるんですか?何の為に特定の場所に誘導したんですかいな?無差別大量殺人するには、癒しのスタンドを暴走させてウィルスを広範囲にばらまくのは意味ありますが、ブチャラティ達だけ相手にするならパープルヘイズだけで十分でしょう?感染力強いわけだし、感染した人が周りにいっぱいいるし…。
 次、少女が「癒し」を拒否したら?…言っては何ですがパープルヘイズウィルスの効果は不気味です。近づきたくもないと思うのが普通です。実はこの為にわざと少女の目の前で何度もパープルヘイズを発動させてました。スタンドは「心で操る」ので「弱い心」ではスタンドが害になって本体が死亡するというのが第3部開始時点での設定でしたが…どう見ても「心弱い」だろっていう人も平気でスタンド使ってたりするので、それは「アヴドゥル」の誤報としましょう。するともし、少女があのウィルスで人が崩れていく様を何度も目撃して「精神」おかしくしてしまうとか考えなかったんでしょうか?ヒトは割と弱いもので…あんな不気味なものを何度も見させられては「狂い」かねません。ヒドい事をするもんです、フーゴ!大量殺人も許せませんが、少女の心に大きな傷を与えてます。気が狂いますって、あんなの、普通。ついでに言わせてもらえば、少女は癒しの力で救うことが出来ますが、咄嗟のことで当初は救えませんでした…本来救えたかもしれない人達を救えなかった、親友を目の前で失ってしまった…これはかなりの精神的ダメージです。フーゴ…お前…

 その他にも、あんた自分で書いた事忘れたか?っていう矛盾記述が最低でも2箇所。まあ、忘れるのは仕方ないです、あれだけの量を書くには相当の日数かかりますし…問題は自分で読みなおさなかったのか?というのと…編集者も誰も明らかなミスを何故指摘しなかったのかっていう。別に発売遅れても…それとも「こんな小説どーでもいっか」っていう扱いでしたか?

 さて、あなたはこのフーゴ…許せますか?
 もちろん2つの意味があります。
 原作と違いすぎるフーゴの存在を許せるか?
 無差別殺人をしておきながら、一切責任を感じていないフーゴを許せるか?
 当然、私はどちらも許せないのでこの雑記を書いたわけですが。まあ、原作と違うというのは私の考え方であって、荒木先生がこの小説版のフーゴの方が正しいんだと言えば…それが正しいんでしょうけどね。でも、最低でも無差別殺人をして責任を感じないような人には見えませんでしたが…。
 何度か著者をバカにしてますが…それが侮辱だとも思いません。だって…今説明した通り、本気で「バカ」だもん…それに、商業流通物は批判される運命にある。私は…批判する為に買ったわけじゃない。批判する為だけに買って「私は金を出して買ったんだから批判する権利あるんだ!」とか言ってるわけじゃない。買って…その代金は印税として一部が著者の金となる…ならば「買って損した」と思った私は…この本を徹底的に批判した、それだけの事。とにかく、ここまでレベルの低い小説は滅多にないです…ジョジョどうこうでなく…というかジョジョの名前とったら売れません、こんなの。これがプロの仕事ですか、ホントに?
(2001年 6月 1日謎雑記より)

 後にジョジョ第6部の家庭用ゲーム(こちらもファン激怒の駄作。ゲームとしてどうこうでなくてジョジョとして腐りきってました)の攻略本にて荒木先生のインタビューがあり、そこで、フーゴがブチャラティを裏切っているようで裏切ってない小説を依頼したみたいな事を言ってました。…ここまでレベル低いものを作られるとは思ってもいなかったでしょうが、荒木先生も同罪です。原作者だからといって、フーゴというキャラを作ったのが荒木先生だからといって誇り高く、理知的でもあったフーゴを汚すことは許されません。
 っていうか時間的な問題でも、有り得ないんですけどね、こんな用意周到な計画。とっくにディアボロ倒されちゃってます、こんな事してたら。